年金の繰上げ繰下げ | 繰上げは損で繰下げは得なのか

(Jimmyblog-No.0085)

75才まで繰下げで1.84倍には惹かれるかもしれないが

改正前は70才までだった繰下げが75才まで可能となり、75才まで繰下げると原則の1.84倍の年金額になる、と聞くと、繰上げは損、繰下げるとすごく得、のようなイメージを持ってしまいがちですが、本当にそうなのでしょうか?

老齢年金の増減額のしくみ

老齢基礎年金・老齢厚生年金ともに65才からの支給が原則だが、60才になればいつでも繰上げて受給できます。また反対にできるだけ繰下げると70才or75才(生年月日による)からもらうことも選べます。

繰上げは0.4%/月or0.5%/月(生年月日による)で減額され、繰下げると0.7%/月増額されます。本来の年金収入が100万円/年の人が5年繰上げて60才からもらい始めると76万円/年へ減額されます。反対に10年繰下げて75才からもらうと184万円/年へ増額されます。それぞれ、その増減された金額が終身続きます。

なぜ支給開始時期により年金額が増減するのか

さてそもそも、なぜこのような計算になっているのか、冷静に考えてみましょう。

たとえばある男性が82才(2022男性の平均寿命81.47才を切上げ)まで生きた場合の生涯受取年金収入(概算)は、原則が100万円/年の場合、
①原則(65才~82才):100万円/年×17年=1,700万円
②5年繰上げ(60才~82才):76万円/年(△0.4%/月)×22年=1,672万円
③5年繰下げ(70才~82才):142万円/年×12年=1,704万円
④10年繰下げ(75才~82才):184万円/年×7年=1,288万円
となります。

結果は、④は別として、①~③は近い金額となっています。つまり繰下げ繰上げの増減の意味は、平均寿命まで生きた場合のトータルの年金収入をほぼ等しくするための調整だと言えます。

1.84倍が最強とは限らない

先ほどの④のように82才で寿命が尽きてしまうと、年額は2倍近くに増えたとしても、もらう期間が短かすぎて、トータルの受給額は繰上げした人よりも少なくなってしまいます。ただその後5年長生きすれば、原則(65才から受給)のトータル受給額に追いつき、その後は最強です。

結局どうすべきか

実際にいつからもらい始めるかは、年金以外の収入の有無や預貯金額にもよるため、その人ごとにベストな選択は違ってくると思われます。また、注意すべき点も多々あります。たとえば
・繰上げ繰下げすると他の給付へ影響することがあるので、決定前には年金事務所等で相談すべき
・もらい始めてしまえば年金額は終身(死ぬまで)確定するが、繰下げしていると何かしらの改悪がされるリスクが残る
・老齢基礎年金と老齢厚生年金は、たとえば片方だけ繰下げることはできるが、繰上げは同時にしかできないなど、扱いが複雑なので、やはり専門家(年金事務所・社労士等)へ相談すべき、などです。

ベースの考え方としては、原則がよいようにも思われます。プラス、特に事情や希望があればそれに応じて有利と思われる選択肢を混ぜるのもよいかもしれません。いったん開始時期を選択して老齢年金をもらい始めたら、原則、変更はできません。決定前に、社労士等へ相談することをお勧めします。







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