この残業代、安すぎない? | 月給を自分でチェックする方法

 (Jimmyblog-No.0115)

そもそも残業代とは?

一般に“残業代”と言われているのは“定時以降などに働いた場合に支払われる給与”というイメージかと思います。残業を長時間したら、通常よりも高い時間単価(25%増しなど)で残業代が出るという事は、ある程度知られているかもしれません。

しかし“残業代”と一口に言っても、労働基準法上の取扱いは少し複雑です。残業の内容によっては、単価の割増は不要の場合や、逆に25%増しでは不足で35%増しや50%増しorそれ以上でなければ法違反となる場合もあります。

割増率の改正

いまひとつ周知されていないように感じますが、令和5年4月1日から、中小事業主(小さな会社や個人事業所)であっても月60時間超の時間外労働には50%以上の割増率が強制適用になりました。

令和5年7月現在の割増率は、
①一日8時間、一週40時間超(一ケ月60時間以内の時間外労働)・・・25%以上
②一ケ月60時間超(累計60時間となった時以降の時間外労働)・・・・50%以上
③法定休日(週一日の休日)の労働(休日労働)・・・・・・・・・・35%以上
④PM10時~AM5時の労働(深夜労働)・・・・・・・・・・・・・・25%以上
となっています。

自己チェックの方法

さて割増率は上記のように決まっているのですが、では実際に給与明細のチェックはどのようにすればよいのでしょうか?

給与明細には、その月の残業代(時間外・休日・深夜手当にあたるもの)と残業時間の記載があるはずです。残業時間が月計60時間以内で、休日や深夜労働していない月であれば、単純に残業代を残業時間で割れば、アナタの割増されている(はずの)時給が出せます。

それでは、この時給が正しいか(きちんと割増残業代がもらえているか)は、どのようにチェックするのでしょうか?

月給を時給に換算するには

残業代のあるべき時給を出すには、月給のうち決められたものだけを合計し、それを『月平均所定労働時間』で割って時給に換算します。最低賃金(Jimmyblog-No.0109)の時と似ていますが合計するものは微妙にちがうので注意が必要です。残業代の場合は“合計しなくてもよいもの”が決められています。ややこしいですがどちらも労働者保護のための決まりだと思われます。

合計しなくてもよいもの(限定列挙)・・・家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時的な賃金(報奨金・結婚手当等)、毎月支払でない賃金(賞与等)

よって、合計しなければならないものは何?かと言えば、基本給と、上に挙げられていない各種手当(たとえば職務手当、皆勤手当、危険作業手当等)となります。

月平均所定労働時間とは

会社等で決められた“年に何日働くか”が「年所定労働日数」です。そして同じくその会社等で決められた“1日に何時間働くか”が「所定労働時間」です。よって、(年所定労働日数×所定労働時間)÷12で『月平均所定労働時間』が算出できます。

「所定労働時間」は毎日何時に出勤して定時の業務終了は何時なのかや休憩時間から、自分ですぐわかると思います。「年所定労働日数」がちょっと?かもしれませんが、これは会社等のカレンダーどおりでカウントして下さい(365日から会社等の休日を引くなど)。

事例Q&A

Q:令和5年6月分の給与明細は以下のとおりでした。
月給30万円(内訳:[支給]基本給18万円、資格手当3万円、家族手当(@1万円×扶養2人)2万円、通勤手当(実費)5千円、住宅手当(借家家賃×10%)5千円、皆勤手当1万円、残業代5万円[勤怠]残業時間29.5時間(休日・深夜労働なし))
年所定労働日数244日、所定労働時間8時間の会社の場合、この残業代は正しいでしょうか?

A:正しく計算されています。

まず、残業代のあるべき時給を出します。
月給のうち合計するのは基本給と資格手当・皆勤手当なので
18万円+3万円+1万円=22万円・・①
月平均所定労働時間は(244日×8時間)÷12=162.6時間・・②
①/②=1,353円
これが割増前のアナタの時給です。
今月は、一ケ月60時間以内の時間外労働のみだったので、割増率25%以上つまり1,353円×1.25=1,691円以上で残業代が計算されていれば適法です。

それでは給与明細から実際に使われている時給を計算してみましょう。
残業代5万円÷残業時間29.5時間=1,695円となります。
1,695円>1,691円なので、給与計算は正しいと言えます。

難しいと思ったら相談を

勤怠状況にもよりますが、実際の計算はかなり煩雑になるケースもあります。
また、意外な用語の使い分けや取扱いがあったりします。例を挙げると
・所定労働時間(たとえば一日7.5時間)を超えていても、法定労働時間(一日8時間)を超えなければ、割増賃金の対象となる「時間外労働」ではない。つまりその30分は割増なしの時給でよい。
・所定休日(たとえば土曜日など)の労働であっても、法定休日(たとえば日曜日など)の労働でなければ、「休日労働」ではない。つまり割増率35%以上は適用されない。「時間外労働」に該当すれば割増率25%以上などが適用される。
一ケ月60時間超となるかの時間数累計計算には、法定休日労働の時間はカウントしない。
・割増率は合計で適用しなければならない場合がある。たとえば一ケ月60時間超の残業が深夜に及んだら50%+25%=75%以上の割増率となる。
などです。

「こんなの自分でチェックなんてムリ・・でもかなり少ないかも」と思ったときは、社労士等に相談するのがよいでしょう。


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