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130万円の壁

  (Jimmyblog-No.0155) 社保の被扶養者ライン 最近、話題になっている壁の一つの130万円。 自分にとって、この金額がどういう意味を持つのか、考えようとしても、いろいろな壁(103万円・106万円・130万円・・・・)があるようで、一体何が何やら???と思っている方も多いのではないでしょうか。 さてここで、 130万円というのは、社保(健康保険・厚生年金)の被扶養者となるための要件の一つで「年収上限」 です。いわゆる “社保の扶養”に入ることができるライン ということです。 年収とは 仮にあなたが今、配偶者(会社員・社保加入)の社保の扶養に入ることができるか否か、悩んでいるとします。 おそらく、わかりにくいのは 「“年収”と言われても・・・何の収入をどのようにカウントするのか?」 という部分かと思われます。 では、年収のとらえ方をケース別に見てみましょう。 給与収入なら額面 あなたが給与所得者(パート・アルバイト等)の場合は 「給与の年収(手取りではなく額面)」 で考えます。 詳細は 被扶養者資格の再確認 個人事業者なら事業所得 あなたが自分で事業をしている(自営業者)なら 「最低限の必要経費を引いた残りの年間収入額」 が年収になるとされています。 “最低限の必要経費”って何?と思ってしまいますが、協会けんぽホームページのよくある質問のQ&Aには「社会通念上明らかに当該所得を得るために必要な経費(例:製造業における原材料費、農業における肥料費等)であり、それ以外の費用(例:租税公課、旅費交通費、広告宣伝費、接待交際費、損害保険料、減価償却費、福利厚生費、利子割引料、雑費、青色申告特別控除等)は差し引くことはできません。」と書かれています・・・微妙すぎてよくわかりません。 そこで昨年頃ではありますが、年金事務所で対面質問してみました。 すると、協会けんぽでは「事業所得を出すとき、収入(売上)から引ける経費は限定される。また青色申告特別控除(10万円or55万円or65万円)は引けない。が、自営業者の場合、開業当初などは所得の変動が予測されるので、経営が安定するまでは事業所得を社保扶養判定には入れなくてよい」との返答でした。 ざっくり言うと、 青色申告決算書(白色申告なら収支内訳書)の売上-売上原価=差引金額が130万円以上になる年が続...

パートの壁のツボ

(Jimmyblog-No.0153) 壁は103万円or106万円or130万円or・・・? 家庭にフルタイム正社員などの主な稼ぎ手がいて、その配偶者がパート等で家計を補助している場合、 パートしすぎると何か損になるのか? という話題があります。 よく目にするのは「家計全体での手取額が減る(ことになるので損)」という表現です。 しかしこれはかなり近視眼的な捉え方であり、また、壁のライン(103万円、106万円、130万円・・・・)も一体どういう位置関係なのか、どのようなケースでどのような影響があるのか、整理されないまま数字が独り歩きして、パート勤務している人の不安をあおっているような印象を受けます。 パートの壁のツボ 自分の壁について、そのしくみを理解していれば、これから年末にかけても安心して働くことができるのではないでしょうか。 壁のツボは、以下あたりかと思われます。 ・昔あった所得税の 103万円の壁(超えると主な稼ぎ手の税金が高くなるなど)は、もう無い 。 ・103万円の壁があるとすれば、主な稼ぎ手の勤務先から103万円基準で配偶者手当(扶養手当)が出ているケースのみ。 ・130万円の壁は実際にはアバウトでゆるい運用になっている。 ・106万円の壁は、当初の契約内容から計算するため、残業代は含まない。つまり 就業調整してもしなくても自分の社保加入判定には影響しない 。 パートの壁フローチャート 言葉で説明すると煩雑になるので、フローチャートを作ってみました。 アナタがパート勤務している立場でフローチャートを進めると、自分には“パートの壁”なるものがあるのか無いのか?あるとしたらその年収ラインは?がわかるようになっています。 次のファイルをクリックorタップしてチェックしてみて下さい。 パートの壁フローチャート 結果の見方 さてフローチャートをやってみて、結果はどうだったでしょうか。 結果①~⑤の意味は、次のとおりです。 結果①:家庭の主な稼ぎ手が自営業者(個人事業者)であったり、サラリーマンであっても社保加入していなければ、 そもそも壁は無い と考えられます。 結果②:パート年収が130万円超になるといわゆる社保の扶養を外れ、自分で国保・国民年金(@19千円/月)を支払うこととされています。 結果③:パート年収が130万円超で②と同様になりますが、さらに働い...

未支給年金

 (Jimmyblog-No.0125) 年金受給者が死亡すると発生する「未支給年金」 公的年金(国民年金や厚生年金分)を受け取っていた人が亡くなった時、つまり相続が起こった時、 「未支給年金」 という言葉にふれることになります。 未支給年金とは何のことか? そしてそれはだれのものなのか? どのようにして受け取るのか? 相続が起こって初めて 「未支給年金の請求」 という場面に遭遇し、とまどうことも多いようです。 未支給年金とは何か? 未支給年金とは、年金受給者が亡くなった日(死亡日)において、まだ受け取っていなかった年金 のことです。 なぜそのようなものが発生するのでしょうか?それは、年金支給のしくみが次のようになっているからです。 公的年金は2ヶ月ごとの後払いで、入金は通常の場合、偶数月です。具体的にはたとえば2月分と3月分が4月に入金します。そして日割りという概念は無く、月の中途で死亡しても、その月分は支給されます。 よって、 いつ亡くなったとしても必ず、未支給年金は発生 することとなります。 未支給年金はだれのもの? 未支給年金をもらえるかの判断には、まず、 亡くなった人と生計を同じくしていた(生計同一)か が問われます。生計同一と認められるのは、住民票上同一世帯or住民票上の住所が同一or相互の経済的援助の事実があるなどの場合です。 生計維持とはちがうので収入は問われませんが、そもそも生計同一だった人がいない場合には、未支給年金は近しい親族であっても受け取ることはできません。つまりだれももらえないケースもあるという事です。 そして 生計同一の人が複数いる場合には、配偶者→子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹→それ以外の3親等内の親族という順序 で、もらえる人が決まります。なお、社会保険等における取扱いと同様に、この場合の配偶者には内縁関係も含みます。子の扱いも、戸籍上の結びつきがなくても該当する場合もあります。詳細は日本年金機構等へ問い合わせればわかります。 未支給年金の請求 未支給年金は、 年金事務所等へ請求 →支給決定通知書が届く→指定口座へ振込という手順で受け取ることになります。つまり 受け取るためには原則、請求が必要 です。 年金事務所等へは、必要事項を記入した「未支給年金請求書」に戸籍等の必要書類を添付して提出します(郵送も可)。 個人年金や企業...

就業規則の基礎知識

(Jimmyblog-No.0120) そもそも就業規則とは 就業規則とは、会社等のいわゆるルールブック です。 会社等は労働条件などについて、労働基準法等で決められている最低基準を満たさなければなりませんが、それを上回る条件を定めることもできます。たとえば、労働基準法における法定休日は週一日(毎週少なくとも一回)ですが、現在多くの会社は週休二日です。このように、 労働基準法等をクリア するものであれば、それぞれの会社等が 自社の労働者に適用される労働条件等 を定めることができ、それらを書面にしたものが就業規則です。 会社等(法人や個人事業者など)で 常時働く人が10人以上になったら、会社等は就業規則を作成し、労働基準監督署へ届出、さらに労働者へ周知する義務 が生じます。違反にはペナルティがあります(30万円以下の罰金)。 就業規則には何が書いてある? 就業規則には、 労働時間(始業・終業時刻や休憩、休日、休暇、シフト変換ルールなど)、給与(締日や支払日、計算方法など)、退職(解雇含む)については、必ず記載 しなければならないとされています。 また、賞与や退職金、表彰や制裁(懲戒)、休職、旅費などについて定めをする場合には、これらについても記載することとなっています。ちなみに、 就業規則に定めが無ければ懲戒処分(減給、出勤停止、懲戒解雇など)は行えない こと とされています。 10人未満の事業場でも作成できる 小規模事業者などで労働者が10人もいないという場合、就業規則の作成義務はありません。よって、労働基準監督署への提出義務もありません。 けれども作成してはならないというワケではなく、少人数の事業場であっても就業規則(or就業規則に準ずるもの)を作成することは問題ないとされています。そして、作成し労働者へ周知している場合、それは10人以上の事業場で作成されている就業規則と同じ効力を持つものとなります。 同じ効力って何?かと言うと、たとえば事業場で何かトラブルが起こった場合、 就業規則(に準ずるものでも)があれば、それを根拠として判断することができ、不毛な争いを避けられる 可能性があるということです。またトラブルでなくても、労使間でルールを明確にしておけば、お互いに不安や不満を抱くことなく、本来の業務を遂行できるという面もあります。 労働条件通知書との関係は・・ “...

この残業代、安すぎない? | 月給を自分でチェックする方法

  (Jimmyblog-No.0115) そもそも残業代とは? 一般に“残業代”と言われているのは“定時以降などに働いた場合に支払われる給与”というイメージかと思います。残業を長時間したら、通常よりも高い時間単価(25%増しなど)で残業代が出るという事は、ある程度知られているかもしれません。 しかし“残業代”と一口に言っても、労働基準法上の取扱いは少し複雑です。残業の内容によっては、単価の割増は不要の場合や、逆に25%増しでは不足で35%増しや50%増しorそれ以上でなければ法違反となる場合もあります。 割増率の改正 いまひとつ周知されていないように感じますが、令和5年4月1日から、中小事業主(小さな会社や個人事業所)であっても 月60時間超の時間外労働には50%以上の割増率 が強制 適用になりました。 令和5年7月現在の割増率は、 ①一日8時間、一週40時間超(一ケ月60時間以内の時間外労働)・・・25%以上 ②一ケ月60時間超(累計60時間となった時以降の時間外労働)・・・・50%以上 ③法定休日(週一日の休日)の労働(休日労働)・・・・・・・・・・35%以上 ④PM10時~AM5時の労働(深夜労働)・・・・・・・・・・・・・・25%以上 となっています。 自己チェックの方法 さて割増率は上記のように決まっているのですが、では実際に給与明細のチェックはどのようにすればよいのでしょうか? 給与明細には、その月の残業代(時間外・休日・深夜手当にあたるもの)と残業時間の記載があるはずです。残業時間が月計60時間以内で、休日や深夜労働していない月であれば、単純に残業代を残業時間で割れば、アナタの割増されている(はずの)時給が出せます。 それでは、この時給が正しいか(きちんと割増残業代がもらえているか)は、どのようにチェックするのでしょうか? 月給を時給に換算するには 残業代のあるべき時給を出すには、月給のうち決められたものだけを合計し、それを『月平均所定労働時間』で割って時給に換算します。 最低賃金( Jimmyblog-No.0109 )の時と似ていますが合計するものは微妙にちがう ので注意が必要です。 残業代の場合は “合計しなくてもよいもの”が決められています。 ややこしいですがどちらも労働者保護のための決まりだと思われます。 合計しなくてもよいもの(限...

最低賃金より安くない? | 月給を自分でチェックする方法

(Jimmyblog-No.0109) そもそも最低賃金って何? 最低賃金とは、国の定める賃金(給与)の最低ラインで、単位は時給で考えます。原則、都道府県ごとに定められ、毎年7月頃に発表され、その年の10月から新しい基準が適用されます。令和5年6月現在(令和4年10月~令和5年9月)の 愛媛県の最低賃金は853円 です。 正社員、パート、アルバイト等にかかわらず、また労使の合意があったとしても、このライン以上の賃金を支払っていない会社等は最低賃金法違反となり、50万円以下の罰金が科されることがあります。 自己チェックは時給に直して比較 パート、アルバイト等で時給制なら、そのまま比較すれば自分の時給が安すぎないかチェックできます。日給であれば、その額を1日の所定労働時間(その会社等で1日何時間働くことになっているか)で割って時給に換算すればわかります。 では、月給の場合はどうすればよいのでしょうか?月給を時給に換算する・・・わかるようなわからないような感じですよね。 月給の場合は、月給のうち決められたものだけを合計し、それを『月平均所定労働時間』で割って時給に換算します。決められたものとは?そして月平均所定労働時間とは、具体的に何のことなのでしょうか。 月給のうち合計するものは・・ 給与明細には、基本給以外にもいろいろな手当が記載されていることがあります。すべて給与ではあるのですが、最低賃金と比較する時には、 毎月支払われる基本的な賃金だけが対象 となります。具体的には “合計しないもの”が決められている ので注意が必要です。 合計しないもの・・・臨時的な賃金(報奨金・結婚手当等)、 残業手当 等、皆勤手当、 通勤手当 、家族手当、毎月支払でない賃金(賞与等) よって、合計するものは何?かと言えば、基本給と、たとえば職務手当、住宅手当等となります。 月平均所定労働時間とは 会社等で決められた“年に何日働くか”が「年所定労働日数」です。そして同じくその会社等で決められた“1日に何時間働くか”が「所定労働時間」です。よって、 (年所定労働日数×所定労働時間)÷12で『月平均所定労働時間』 が算出できます。 「所定労働時間」は毎日何時に出勤して定時の業務終了は何時なのかや休憩時間から、自分ですぐわかると思います。「年所定労働日数」がちょっと?かもしれませんが、これは会社等の...

失業保険のしくみ | 雇用保険制度の補償給付

(Jimmyblog-No.0106) 切実なお金の問題なのに周知不足の失業保険 何らかの理由で失業した時、雇用保険の失業等給付(いわゆる失業保険)という制度があり、いくばくかのお金が受け取れるらしいとは知っていても、その内容についてはよく知らないという方、多いのではないでしょうか。 サラリーマンが定期収入を失うという事は切実なお金の問題であるにも関わらず、そのしくみは複雑で、周知も十分にはされていません。 何事もなければそれに越したことはないのですが、万が一の場合に何がどうなるのか、ざっくりとでも知っておけば、身を守れる場面があるかもしれません。 受給要件 失業保険をもらうには、原則、 離職前2年間に12ヶ月以上、雇用保険に加入 している必要があります。 雇用保険に加入って?という方。1週間の労働時間が20時間未満などでない限り、雇用保険には入っているはずです。そして給与明細の雇用保険欄に金額が印字され天引きされているはずです。また、就職した時に会社等から本人用の「雇用保険被保険者証」をもらっているかもしれません。それを確認できれば、加入期間を自分で正確に把握できます。 なお、 特別の事情(倒産・解雇等、過重労働、ハラスメント、雇止めなど)による場合は、前1年間に6ヶ月以上、雇用保険に加入していればOK です。 給付額 離職前の直近6ヶ月に給与をいくらもらったかをもとに「賃金日額」なるものが計算され、それにその金額や年齢に応じた給付率(45~80%)を掛けて失業保険の給付額「基本手当日額」が決定されます。 ただし上限があります。たとえば 30才以上45才未満の場合は、1日当たり7,595円がMax (令和5年5月現在)です。 給付開始日 離職後すぐにお金が受け取れるわけではなく、ハローワークへ行って求職手続きをし、待期(1週間)し、その後も離職理由によっては2ヶ月間、待った後の給付となります。 給付日数 何日分もらえるかも、離職理由(会社都合か自己都合か等)や勤続年数、年齢等により異なり複雑です。大まかに言うと、長年勤続の年配者の中途失業に手厚いしくみです。 たとえば 勤続10年未満の自己都合退職の場合は、90日分 しかもらえません。 受給期間 いつまでもらえるかは原則、 離職日の翌日から1年間 とされています。どういう意味かと言うと、もしハローワークへ行くのが遅...

算定基礎届 | 4・5・6月に残業すると社保料で損する?

(Jimmyblog-No.0104)  算定基礎届についてのウワサの真相 算定基礎届の対象月である4・5・6月に残業すると社保料が高くなるから損、というようなウソかホントかわからない話を時々耳にしますが、本当のところ、どうなのでしょうか? そもそも給与明細のチェックは難しい 給与関係業務の担当者でもない限り、サラリーマンが自身の社保料(健保厚生)をチェックする機会や習慣はほとんどないかもしれません。社保料の決まり方についても、周知も十分にされていないため、よく知らないという方が多いのではないでしょうか。 社保料(社会保険料、健保厚生)の決まり方 ざっくり言うと、給与から天引きされる社保料は、“給与”が増えれば高くなり、減れば少なくなります。その“給与”とは正確に言うと “標準報酬月額”という4・5・6月の給与から算出したアナタの給与のランクの目安のようなもの のことです。 ランクは原則1年に1回見直しされます。その算出作業のことを算定基礎と言い、会社等は算定基礎届なるものを年金事務所へ提出します。その後、年金事務所が各人ごとの“標準報酬月額”を決定し、会社等へ通知してきます。 算定基礎届の使われ方 算定基礎届によりアナタの給与のランクすなわち“標準報酬月額”が決定されると、それが今後1年間(9月~翌年8月)、給与から天引きされる社保料のもととなります。 そして算定基礎届の使われ方はそれだけではありません。 年金事務所ではアナタの“標準報酬月額”がずーっと管理され、何かあった時(たとえば病気や介護で休んだり、出産したり、もっと先のことで言えば厚生年金をもらう側になった時)の手当金や年金受取額の計算のもとにもなります。 集計対象月(4~6月)には残業を減らすべき? そんな事が現実に可能なのか?という問題はありますが、仮に可能だとします。その場合、残業を減らす→“標準報酬月額”のランクが下がる→社保料が減ることにより、目先(今後1年間)の給与の手取額は多少増えるかもしれません。けれども何かあった時のお金は減ることになります。 何かあった時と言われても・・自分は元気だし何事もなく無事かもしれないじゃん、と思ったアナタ。病気も介護も出産も関係なくても、厚生年金を受給する場面は、生きている限りだれにでも必ず訪れます。寿命は神のみぞ知るですが、 年金は「終身」というとこ...

年金の繰上げ繰下げ | 繰上げは損で繰下げは得なのか

(Jimmyblog-No.0085) 75才まで繰下げで1.84倍には惹かれるかもしれないが 改正前は70才までだった繰下げが75才まで可能となり、75才まで繰下げると原則の1.84倍の年金額になる、と聞くと、繰上げは損、繰下げるとすごく得、のようなイメージを持ってしまいがちですが、本当にそうなのでしょうか? 老齢年金の増減額のしくみ 老齢基礎年金・老齢厚生年金ともに65才からの支給が原則だが、60才になればいつでも繰上げて受給できます。また反対にできるだけ繰下げると70才or75才(生年月日による)からもらうことも選べます。 繰上げは0.4%/月or0.5%/月(生年月日による)で減額され、繰下げると0.7%/月増額されます。本来の年金収入が100万円/年の人が5年繰上げて60才からもらい始めると76万円/年へ減額されます。反対に10年繰下げて75才からもらうと184万円/年へ増額されます。それぞれ、その増減された金額が終身続きます。 なぜ支給開始時期により年金額が増減するのか さてそもそも、なぜこのような計算になっているのか、冷静に考えてみましょう。 たとえばある男性が82才(2022男性の平均寿命81.47才を切上げ)まで生きた場合の生涯受取年金収入(概算)は、原則が100万円/年の場合、 ①原則(65才~82才):100万円/年×17年=1,700万円 ②5年繰上げ(60才~82才):76万円/年(△0.4%/月)×22年=1,672万円 ③5年繰下げ(70才~82才):142万円/年×12年=1,704万円 ④10年繰下げ(75才~82才):184万円/年×7年=1,288万円 となります。 結果は、④は別として、①~③は近い金額となっています。つまり 繰下げ繰上げの増減の意味は、平均寿命まで生きた場合のトータルの年金収入をほぼ等しくするための調整 だと言えます。 1.84倍が最強とは限らない 先ほどの④のように82才で寿命が尽きてしまうと、年額は2倍近くに増えたとしても、もらう期間が短かすぎて、トータルの受給額は繰上げした人よりも少なくなってしまいます。ただその後5年長生きすれば、原則(65才から受給)のトータル受給額に追いつき、その後は最強です。 結局どうすべきか 実際にいつからもらい始めるかは、年金以外の収入の有無や預貯金額にもよるため、その人ごと...

遺族年金の計算方法 | 年金生活の高齢者夫婦に相続が発生したら

(Jimmyblog-No.0083) いざという時のその後の年金額は? 遺族年金という言葉は聞いたことがあっても、その計算方法や自分の場合の金額を把握している方は少ないように思われます。ざっくり言うと、遺族厚生年金は手厚いが、高齢者夫婦の場合は遺族基礎年金は関係ない(支給は無し)となります。 遺族厚生年金とは 会社員や公務員だった人が老齢厚生年金を受給していて亡くなった場合に、家族が受け取れるのが「遺族厚生年金」です。 遺族基礎年金とは 自営業者などだった人は老齢基礎年金(いわゆる国民年金)だけの受給となり、亡くなった場合の保障である「遺族基礎年金」は、ごく限られた人だけが受け取れます。限られた人とは、未成年の子がいる配偶者or未成年の子などで、支給期間も子が成人するまでの間とされています。 手厚い遺族厚生年金の計算方法 たとえば老齢厚生年金20万円/月と老齢基礎年金6.5万円/月を受給していた夫(82才)が亡くなった時、同じく年金受給者(老齢基礎年金は6.5万円/月)の妻(80才)のその後の年金はどうなるのでしょうか? 事例①妻が専業主婦だった場合 遺族厚生年金の額は、 夫の老齢厚生年金の3/4 (20万円/月×3/4=15万円/月)です。 よって今後の妻の年金額は、自分の老齢基礎年金6.5万円/月+遺族厚生年金15万円/月=21.5万円/月となります。 年収258万円となりますが、遺族年金は所得税非課税、自分の年金(6.5万円/月×12ヶ月=60万円/年)も110万円の枠内なので、所得税はゼロです。 事例②妻も会社員だった場合 妻自身の老齢厚生年金が16万円/月だとします。その場合、 3つの金額をまず比較 します。 ❶ 夫の老齢厚生年金の3/4 ・・・20万円×3/4=15万円 ❷ (夫の老齢厚生年金+妻の老齢厚生年金)の1/2 ・・(20万円+16万円)×1/2=18万円 ❸ 妻の老齢厚生年金 ・・・16万円 この中で一番多い金額は❷の18万円。なので、この18万円から妻自身の年金16万円を引いた金額が遺族厚生年金の額となります。つまり18万円-16万円=2万円/月です。 今後の妻の年金額は、自分の老齢基礎年金6.5万円/月+自分の老齢厚生年金16万円/月+遺族厚生年金2万円/月=24.5万円/月となります。 事例①と異なる点は、所得税ゼロとはいえない事です...